リュザック・サンテミリオンの翌日は、甘くて美味しいソーテルヌを作っているシャトーにお邪魔しました。
シャトー・シガラ・ラボ― LE CHÂTEAU SIGALAS RABAUD
ボルドーのグラン・クリュ格付けの中で最も小規模なシャトー。
オーナーの息子さんが迎えて下さり、私たち2人だけのヴィジットがスタートしました。
まずはブドウ畑の見学。
指さして教えてくれたのは、かの有名なChateau Yquem シャトー・イケム(LVMHグループ)。
ボルドーのグラン・クリュ格付けを持つとのことなので、その格付けについて伺ってみました。
この格付けは1855年ナポレオン3世の要請により制定され、当時はワインの価格で格付けが決まったのだそうです。(価格と品質は比例しているという考えから。)
1855年以降、1973年に一度だけ改定され、シャトー・ムートン・ロスチャイルドがメドックの2級から1級に昇格して以来、変化なし。
ということは、1855年以降に始まったシャトーが、グラン・クリュ格付けをもらうことはできず、そうやって評価されるのでしょう。
「どうするんですか?」という私の質問に
「ロバート・パーカーなどのアメリカのワインガイドの格付けが重要で、著名なアメリカのガイドで高得点をヒットできると、売れるのです。」
とのこと。
「フランスのワインガイドではなくてアメリカのワインガイド?」と伺うと
「アメリカのガイドでなくてはダメですね。」と笑われていました。
このシャトーのブドウ畑は平地に広がっており、高低がないため、品質が揃ったブドウを栽培することが可能だとのこと。
2016年に環境価値重視の一番ハイレベルな認証を受け、除草材を一切使わない、オーガニックではないですが、自然に近い農法をとっています。
例えば、虫よけに使われているのが、写真の赤い紐。この紐に害虫が嫌いなホルモンを浸み込ませてあるので、虫が卵を産み付けに来ないのだそうです。
農薬を使うと、元気なブドウの樹にまで農薬が付いてしまうので、手作業でブドウ栽培をしており、繰り返し繰り返し「自分たちにできるのは、ブドウが元気に良く育ってくれる手助けだけだ。」と言われていました。
なぜ農薬を使うよりも手のかかる環境重視の栽培法を取るのですか?という質問に、温暖化をはじめ、環境の変化がブドウの樹に与える影響を避けるために、やらざる負えないと言われていました。
例えば、ソーテルヌには貴腐葡萄が使われるのですが、貴腐葡萄はブドウにBotrytis cinerea ボトリティス・シネレアという菌がついてできるのですが、この菌の繁殖を助けるのが、朝霧。
この朝霧はソーテルヌの北西を流れるシロン川の水温が低いことがポイントなのだそうで、温暖化によって川の温度が上昇すると、朝霧が発生しなくなり、貴腐葡萄ができにくくなり、ソーテルヌが今のように作れなくなるかもしれません。
「時には大雨、雹など思いがけないことが起こることもあるし、自然相手に確実ということはないけれども、私たちは自然の中で、ブドウが良く成長する手伝いしかできないんですよ。」という若者の言葉が印象的でした。
テイスティングでは、甘みの強く高額なソーテルヌの消費が減っているので、ボルドーブラン(白)にも力を入れているとのこと。その中での美味しかったのは酸化防止剤の亜硫酸塩の入っていないこちらのワイン。
最近は亜硫酸塩が入ってないワインも見かけるようになりましたが、早飲みようでしょうね。
そしてソーテルヌ。いくら頻繁には飲めないとはいえ、やっぱり美味しいです。
この黄金色と甘くて香り豊かなソーテルヌ。私は時々飲みたいと思うワインです。
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